コラム
賃貸の原状回復費はどこまで入居者負担?退去時に慌てないための確認ポイント
目次
- 退去時に高額な請求を受けて驚かないために
- 原状回復とは入居時とまったく同じ状態に戻すことではありません
- 入居者負担になりやすい汚れや破損とは?
- 原状回復費用は壁紙や設備などの経過年数によって変わることがあります
- 入居時の写真や動画が退去時の大切な記録になります
- 退去立会いがない場合も自分で室内を記録しましょう
- 原状回復費用に疑問があるときは内訳を確認しましょう
- 傷や破損は退去まで放置せず早めに相談しましょう
- 原状回復費用についてよくあるQ&A
- 退去時に慌てないために覚えておきたい3つのポイント
- あわせて読みたい関連コラム
- STVラジオ『ようへいと学ぼう!エンジョイ・ライフ』
退去時に高額な請求を受けて驚かないために
「退去するとき、どのくらいお金がかかるのだろう」
「壁紙の汚れや床の傷は、すべて自分で直さなければならないの?」
賃貸物件から退去するときは、契約内容により、鍵交換費用やストーブ分解整備料、短期解約違約金、冬期間退去違約金などがかかる場合があります。
これらとは別に、室内の汚れや傷の状態によって、原状回復費用が必要になることもあります。
ただし、長年暮らしたことによる自然な劣化まで、すべて入居者が負担するわけではありません。
一方で、入居者の不注意や手入れ不足によって生じた汚れ・破損は、入居者負担になる可能性があります。
このコラムでは、原状回復費用の基本的な考え方や経過年数との関係、退去時に請求内容へ疑問を感じた場合の確認方法について、入居者の方にも分かりやすくご紹介します。

めぐみ社長

ようへいさん
入居するときは初期費用を気にしますが、何年も先の退去費用までは、なかなか考えられないですよね。

めぐみ社長
そうなんです。
ただ、壁紙の汚れや床の傷が見つかったからといって、修理費用の全額が必ず入居者負担になるとは限りません。

ようへいさん
住んでいる間に自然に古くなった部分と、入居者が汚したり壊したりした部分では、考え方が違うということですね。
そこで今回は、退去時に慌てないために知っておきたい、原状回復費用の基本と確認ポイントをご紹介します。
原状回復とは入居時とまったく同じ状態に戻すことではありません
「原状回復」と聞くと、借りたときとまったく同じ新品の状態に戻すことだと思う方もいるかもしれません。
しかし、国土交通省のガイドラインでは、原状回復を単純に「入居時の状態へ完全に戻すこと」とは考えていません。
通常の生活を送っていても発生する汚れや傷み、年月の経過による自然な劣化については、原則として貸主側が負担するとされています。
ガイドラインは、原状回復費用を考えるうえでの一般的な基準です。
実際の負担は、汚れや破損の原因、契約内容、特約の内容などを踏まえて個別に判断されます。
また、契約書に特約が記載されていても、内容の合理性や契約時の説明、入居者の理解・合意などによっては、その有効性が個別に判断されます。

たとえば、次のようなものです。
● 家具を置いたことによる床やカーペットのへこみ
● 日光による壁紙や床の変色
● 通常どおり使用していた設備が、経年劣化によって故障した場合。ただし、誤った使い方や不具合の放置によって故障が拡大した場合は、入居者負担になる可能性があります。
● 通常の生活で生じる程度の細かな傷や汚れ
一方、入居者の故意・過失や通常の使い方を超える使用、必要な手入れを怠ったことによって発生・拡大した汚れや破損は、入居者負担になる可能性があります。
原状回復の一般的な考え方は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で確認できます。
入居者負担になりやすい汚れや破損とは?
入居者負担になる可能性がある代表的な例として、次のようなものがあります。

● タバコによる壁紙のヤニ汚れや臭い
● ペットによる柱や壁の傷、臭い
● 飲み物をこぼした後に放置してできたシミ
● 結露を放置したことによって広がったカビ
● 物をぶつけてできた壁やドアの穴
● 引っ越し作業で付けた床や壁の傷
● 掃除や手入れを怠ったことによる著しい汚れ
● 無断で取り付けた設備や造作による損傷
ただし、実際の負担は、汚れや破損が発生した原因、契約内容、壁紙や設備などの経過年数、部屋の状態などをもとに個別に判断されます。
「傷があるから全額入居者負担」「長く住んだから一切払わなくてよい」と単純に決まるものではありません。
原状回復費用は壁紙や設備などの経過年数によって変わることがあります
壁紙や床材、設備などは、種類によって経過年数や耐用年数を考慮して入居者の負担割合を考える場合があります。
ただし、すべての設備や内装材について同じように経過年数が考慮されるわけではなく、対象となる部位によって考え方が異なります。
たとえば、壁紙はガイドライン上、一般的に6年で残存価値が1円となるように負担割合を考えます。
ただし、6年を経過したからといって、故意・過失による破損や著しい汚れについて、入居者の原状回復義務が必ずなくなるわけではありません。
契約内容や破損の状況、補修範囲などによっては、補修に必要な費用の一部を負担する場合があります。
また、床や建具、設備などは、それぞれ考え方や耐用年数が異なります。
入居時の写真や動画が退去時の大切な記録になります

退去時に多いのが、「この傷は入居前からあった」
「入居者が付けた傷ではない」という行き違いです。
特に、入居中にオーナーや管理会社が変わった場合も、入居時の室内写真や報告記録があれば、当時の状態を確認する資料として役立ちます。
入居したら、荷物を運び込む前に次の場所を確認しましょう。
◆ 壁紙の傷や汚れ
◆ 床の傷、へこみ、変色
◆ ドアや建具の破損
◆ 浴室や窓まわりのカビ
◆ 備え付け設備の故障や不足
◆ タバコやペットなどの臭い
傷や汚れが見つかった場合は、日付が分かる写真や動画を撮り、管理会社へメールなど記録が残る方法で報告しておくと安心です。
退去立会いがない場合も自分で室内を記録しましょう
退去時は、管理会社や修繕業者が入居者と一緒に部屋を確認する「退去立会い」が行われることがあります。
ただし、管理会社や物件の方針、退去時期などによっては、入居者との立会いを行わず、鍵の返却後に室内を確認する場合もあります。
退去立会いの際に確認書への署名を求められた場合は、傷や汚れの確認記録なのか、修理費用の負担を認める書類なのかを確認し、内容に疑問があればその場で質問しましょう。
立会いがない場合は、荷物をすべて運び出して掃除をした後に、部屋全体の写真や動画を撮影しておきましょう。
特に、次の場所は記録しておくことをおすすめします。

● 各部屋の壁と床
● キッチンや浴室などの水まわり
● 収納内部
● 窓、ドア、建具
● ストーブやエアコンなどの設備
● 鍵を返却する直前の室内全体
撮影したデータは、原状回復費用の精算内容を確認し、問題がないと判断できるまで保管しておきましょう。
原状回復費用に疑問があるときは内訳を確認しましょう
退去後に請求書が届き、金額や内容に疑問を感じた場合は、支払期限を確認したうえで、請求の内訳や入居者負担とされた根拠を確認しましょう。
管理会社や貸主に、次の点を確認してみましょう。

● どの部分の修理・清掃費用なのか
● どのような理由で入居者負担と判断されたのか
● 修理する範囲や数量は適切か
● 壁紙や設備などの経過年数が考慮されているか
● 契約書にどのような特約があり、契約時にどのような説明を受けたか
● 敷金がどのように精算されているか
● 傷や汚れが確認できる写真はあるか
● 部分補修ではなく、部屋全体の張り替えや交換が必要とされた理由は何か
請求額が高いという理由だけで、不適切な請求とは判断できません。
まずは写真、見積書、契約書、重要事項説明書などを照らし合わせ、請求の根拠を確認しましょう。
説明を受けても納得できない場合は、消費生活センターや不動産関係の相談窓口、弁護士などへ相談する方法もあります。
傷や破損は退去まで放置せず早めに相談しましょう
室内の傷や設備の故障を見つけても、「退去するときにまとめて伝えればよい」と考えてしまうことがあります。
しかし、退去直前では修理や保険申請のための時間が足りなくなる可能性があります。
偶然の事故による破損などは、加入している火災保険の補償対象になることもありますが、契約内容や事故の原因によって判断が異なります。
また、事故から長期間経過すると、原因や発生時期を確認できず、申請が難しくなる場合もあります。

傷や破損を見つけたら、まず写真を撮影し、管理会社へ状況を報告したうえで、加入している保険会社や保険代理店にも早めに相談しましょう。
毎日の掃除や換気を心がけ、故障や破損を放置せず早めに相談することが、損傷の拡大や思わぬ原状回復費用を防ぐことにもつながります。
原状回復費用についてよくあるQ&A

カラくん
普通に暮らしてできた汚れも入居者負担になるの?

めぐちゃん
通常の使用によって生じた損耗や年月の経過による劣化は、原則として貸主負担と考えられるよ。
ただし、掃除や手入れを怠って汚れを悪化させた場合は、入居者負担になる可能性があるよ。

カラくん
壁紙が張り替えられてから6年以上たっていれば、費用はかからないの?

めぐちゃん
必ず無料になるわけではないよ。
壁紙はガイドライン上、一般的に6年で残存価値が1円となるように考えるけど、これは壁紙の価値に関する考え方だよ。
故意・過失による破損や通常の使用を超える著しい汚れがある場合は、契約内容や補修範囲などに応じて費用を負担する可能性があるよ。

カラくん
退去立会いがない場合はどうすればよいの?

めぐちゃん
荷物をすべて運び出し、清掃を終えた後の室内を写真や動画で記録しよう。
壁、床、水まわり、収納、設備などを撮影し、原状回復費用の精算内容を確認して、問題がないと判断できるまでデータを保管してね。

カラくん
原状回復費用が高いと感じたら、支払わなくてもよいの?

めぐちゃん
自己判断で支払いを拒否するのではなく、まず請求の内訳と根拠を確認しよう。
入居者負担とされた理由や修理範囲、経過年数、契約書の特約などを確認し、納得できない場合は、管理会社へ説明を求めて話し合ってね。
それでも解決しないときは、消費生活センターや専門家へ相談しよう。

カラくん
壁や床を壊した場合、火災保険で直せるの?

めぐちゃん
偶然の事故による破損であれば、契約している火災保険や特約の補償対象になる可能性があるよ。
ただし、経年劣化や故意による破損などは対象外となる場合があるよ。
必ず補償されるわけではないため、写真を撮り、自分で修理する前に管理会社と保険会社へ確認しよう。
退去時に慌てないために覚えておきたい3つのポイント
1.入居したら最初に部屋の状態を記録する
入居前からある傷や汚れは、写真や動画に残し、管理会社へ報告しておきましょう。
入居中に管理会社が変わった場合にも、記録が役立ちます。

めぐちゃん
2.長く住んでも入居者負担が必ずゼロになるわけではない
原状回復費用は、故意・過失の有無や対象物の経過年数、契約内容などをもとに判断されます。
「壁紙が張り替えられてから6年以上経過していれば、どのような汚れや破損も負担しなくてよい」ということではありません。

めぐちゃん
3.傷や請求内容に疑問があれば早めに相談する
破損は退去まで放置せず、写真を撮って管理会社や保険会社へ相談しましょう。
退去後の請求に疑問がある場合も、内訳や根拠を確認してから対応することが大切です。

めぐちゃん
あわせて読みたい関連コラム
退去時の原状回復費用を抑えるためには、入居中から室内の状態に気を配り、故障やカビ、破損などを放置しないことが大切です。火災保険の補償や管理会社への相談方法など、安心して賃貸生活を送るために役立つコラムもぜひあわせてご覧ください。
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退去後に「思っていたより原状回復費用が高かった」というご相談は意外と多いんです。